山本健『ヨーロッパ冷戦史』ちくま新書、2021年

 本書はその名の通り、ヨーロッパの冷戦の歴史を描いている。ヨーロッパは冷戦の主戦場であり、そのため米ソの二大陣営の意向のまま動いているように理解されることが多かった。しかし近年の研究で西側陣営だけでなく、東側も陣営の国同士やソ連への批判があったことが明らかになっている。陣営内の賛否は確実に米ソという両陣営のリーダーの動きも制約することとなった。(ルーマニアの独自性など)

ヨーロッパでの冷戦が存在したことを示すものとして、1960年代のヨーロッパでの軍備拡大が挙げられる。米ソは部分的核実験条約、核不拡散条約の発効などでデタントが醸成されたと解されている。しかし、第二次ベルリン危機などから両陣営は通常兵器や核兵器の配備を進めていった。

他方で、米ソが80年代新冷戦と評される激しい対立が発生した中でも、ヘルシンキ会議の履行を進めるなど両陣営の融和を進めていった。

この通り米ソの対立を受け入れながらも、ヨーロッパの東西対立は時間を経るにつれ独自性を強めていった。

個人的にはソ連への批判が70年代からすでに強まっていたこと、60年代末の西側の通常兵器の拡大が興味深かった。

全体も正統派という構成で、冷戦を知ろうとする人がこれからまずは読んでいくんだろうなと思わされた。